『竹取物語』は、日本最古の物語文学で、平安時代初期に成立したとされています。この物語は、竹取の翁(おきな)と呼ばれる老人が、ある日、竹の中から発見した光り輝く美しい少女、かぐや姫を育てるところから始まります。
かぐや姫は成長するにつれてその美しさが広まり、彼女を妻に迎えたいという多くの求婚者が現れます。しかし、かぐや姫は誰にも心を許さず、求婚者たちに難題を出してそれを成し遂げるように求めます。その難題は、石作りの蓬莱の玉の枝を持ち帰ることや、火鼠の皮衣を手に入れることなど、現実には不可能なものでした。求婚者たちはその難題に挑戦しますが、皆失敗し、かぐや姫を諦めざるを得ません。
さらに、かぐや姫の美しさは帝(天皇)の耳にも届き、帝自身も彼女に会いたいと願います。帝はかぐや姫を宮中に召そうとしますが、かぐや姫はこれを拒みます。しかし、帝はかぐや姫に深く心を惹かれ、その後も彼女に文を送り続けます。
しかし、かぐや姫は自分が月の世界の住人であり、この地上での生活は仮のものであることを明かします。そして、月から迎えが来る夜が近づいていると告げます。帝はかぐや姫を引き止めようとしますが、その努力も虚しく、月の使者が彼女を迎えに来ます。かぐや姫は、最後に帝に宛てた手紙と、不老不死の薬を残して月へと帰っていきます。帝はその薬を見て、自分が飲んで不老不死になることは望まないと考え、それを富士山の山頂で燃やすように命じます。このため、富士山の頂から煙が上がるようになったとされています。
この物語は、日本の民話や伝承の要素を取り入れつつ、月や不老不死といったテーマを描いた、幻想的で深い内容を持っています。かぐや姫の美しさや神秘性、そして人々の愛や欲望が描かれたこの物語は、時代を超えて日本人に親しまれてきました。
『竹取物語』は、その短い中にも多くのテーマを含んでおり、かぐや姫が人間世界に抱いた儚い感情や、求婚者たちの執着、そして帝の思慕など、多様な人間模様が描かれています。結末のかぐや姫が月へ帰るシーンは、儚くも美しい別れの象徴であり、読者に深い印象を与えます。
この物語は、後の日本文学にも大きな影響を与え、様々な形で引用や再解釈が行われてきました。かぐや姫のキャラクターは、現代でもアニメや映画、ドラマなどで取り上げられ、その神秘的な魅力は変わらず多くの人々を魅了し続けています。